将棋研究 2六歩の足跡

対三間箱入り娘急戦 part0 その特徴と利点

今回から研究していくテーマは△54歩、△43銀型三間飛車に対する先手番箱入り娘急戦です。この戦型は頻出で扱いやすく、研究し甲斐のある戦型です。長編記事になると思われますが、どうかお付き合いください。

 対三間箱入り娘急戦

  part0 その特徴と利点

    今回の記事では具体手順の説明の前にこの戦法の特徴や狙いを紹介していきます。まず最初に基本形をご覧下さい。

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  この形が対三間先手番箱入り娘急戦の基本図となります。端歩など細かい位置について気になる方もいらっしゃるかと思いますが、1筋の交換はあまり影響がなく実戦での頻度も低いので入れませんでした。その他細かい違いについては後々触れることもあるとは思いますが、基本的にはこの図を基本図とさせていただきます。

 そして図の仕掛けが成立するか否か?というのが本研究の主要テーマとなります。

  具体的な手順は後に触れるとして、まずはなぜこの仕掛けが優秀なのか?なぜ箱入り娘なのか?という点について見ていきましょう。

 まず、箱入り娘という囲いの優位性を挙げていきます。

 ①相手の攻め(例えばこの戦型では3七のと金が頻出)から右金が船囲いに比べて一路遠く、船囲いでよくある△57歩の筋も消している
 ②5筋に金がいないことで飛車を回っての攻めや逃げ道となる筋(例えば△3七歩成に対して▲58飛車がピッタリという展開など)ができる
 ③完成が簡単な割には二枚の金が連結して固い
 ④相手の美濃より端から遠いので桂を持ったら端を絡めやすい
 ⑤6筋を突かないので玉が78でもコビンの心配がいらず、馬も引きつけやすい
 ⑥囲う途中の隙が少なく、相手の形次第ではスムーズに穴熊に組めて作戦勝ちを狙いやすい

 ⑦オリジナリティーが発揮できる。相手の研究から外れ、対策されにくい。

以上7つの利点が挙げられます。これだけでも箱入り娘の優秀さを感じていただけるのではないかと思います。

次に基本図の仕掛けの狙いと利点ですが、

1.相手が美濃以上に硬くしたり、左桂を捌かれる前に自分だけ右桂や飛車を捌ける(捌きやすい)

2.5筋から仕掛けるため、中終盤で5筋に歩が攻防にきく

3.誘導しやすく汎用性が高い一方で、相手の研究にははまりにくい

の3点が挙げられます。特にこの中でも2は地味ながら一番実感しやすいのではないかと思います。

 また、三間飛車対策と言う割には形が限定されていて誘導率の低さを心配されるかもしれませんが、後手は変な手を指しておらず、△43銀型では誘導率が高いと言えます。ここで他の形についても箱入り娘から組める対策をまとめておきます

 ノマ三△43銀     →本仕掛けの基本図へ

 ノマ三△53銀、変則三間

     →⑥の利点を活かして箱入り娘から穴熊に組み作戦勝ちを狙いやすい

 石田系  →▲25歩を決めれば無問題

 角道オープン、△45歩反発

    →角道を突かずに銀を上げて早期の仕掛けを見せるので相手としては非常にやりにくい

 ということで相手が三間使いならば必然的に図の形への誘導率が高くなりやすいのです。

 ここまで簡易的に戦法の特徴を示してきましたが、具体的な手順を紹介する前に簡潔に戦い方の方針をあらかじめ示しておいてこの記事を終えます。

  ⑴5筋から2筋、3筋と突いて▲3四歩を狙い飛車先を突破する

  ⑵右桂が捌いて先手ペースへ

  ⑶角は自分から交換せず相手の手に乗って捌く

  ⑷右銀は捌けなければすぐに引いて自玉を固めることを考える

  ⑸相手の攻めはと金ならば受け流して攻め合い、龍に対しては受けを惜しまない

これが基本の方針となります。次回は仕掛けが上手くいきやすく、頻出の形である後手角交換(36手目△45歩)型を見ていきましょう。