将棋研究 2六歩の足跡

角換わり腰掛け銀vs早繰り銀 研究最前線 part2

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1図を再掲します。

前回は1図より△92飛の変化を掘り下げてみました。しかし結論から言えば、1図でソフト最善の応手は△73歩で、今回はその手について掘り下げていこうと思います。

実戦では筆者の体感的に、人間ならば△92飛を選ばれる方が多く、△73歩は少々レアケースなのですが、強い方ほどこの変化を選ばれることが多く、やはり重要性は高いと言えます。

1図からの手順②

△73歩▲53角成△41玉▲62歩(3図)

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△73歩と打った場合でも、▲62歩までの手順は一本道です。しかし迎えた3図、前回の形では△42銀と節約する一手だったのですが、今回はちょっと事情が変わってきます。

前回持ち駒の銀を省略して受けたのは、

①▲83銀という確実な攻めが先手から用意されているため、受け駒を節約して攻撃に回した方が得だったこと

②▲78飛と回る局面が中心となるため、▲24歩をケアする必要性が薄かったこと

が挙げられます。しかし今回は①について▲83銀の筋がないためにさほど先手に確実な攻めがあるとは言い難く、②については7筋から飛車が成れないことで▲78飛よりも▲24歩の方が価値が高いことからケアする必要性が生じます。

すなわち、今回は後手にとって自陣に持ち駒を投資する価値が十分であり、△42銀とする一手ではありません。

ここで後手に用意された選択肢は3つ、△42銀、△42銀打、△52銀です。順番に見ていきましょう。

3図からの手順①

△42銀▲61歩成△53銀▲同と(4図)

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まず、前回と同じ△42銀には先手、▲61歩成と踏み込みます。代えて▲64馬では次の狙いに乏しく元気がありません。

4図からは手が広そうですが、ここで自陣に駒を投資するのは3図で打つより損ですし、△75角は打ってみたいですが▲51とが取りづらく(▲52銀からばらして▲55飛△53角打に▲78飛)▲78飛を消しているという点で後述する△68銀に劣ります。そこで4図からは△31玉、△68銀が有力です。

4図からの手順①

△31玉▲48玉△75角▲51と△53角▲41銀成△42金打▲32銀成△同玉▲52金△75角▲24歩△同歩▲25歩△15角▲26金まで先手優勢(結果3図)

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△31玉に対しては先手も玉を上がってから▲51とと寄ります。後手は、要の53のと金を抜いて十分にも見えますが、先手は基本に忠実に守りの金を狙っていくのがこの形の急所になります。後手は常に▲24歩が付きまとい、受けが難しくなっていきます。

▲52金に対して△同金は▲41銀、△64角も▲42金~▲63金で狙われてしまうので△75角が最善ですがやはり▲24歩から十字飛車を狙った継ぎ歩攻めが厳しいです。

結果図のような△15角はソフトの示す手なのであまりされることはないとは思いますが、それほど後手は手が難しく、攻め駒が十分で玉も耐久力のある先手がすでに優勢の局面です。

4図からの手順②

 △68銀▲48玉△75角▲51と△同玉▲52銀△同飛▲同と△同玉▲55飛(5図)

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4図から△31玉では先手玉に迫れないので、今度は△68銀とします。途中▲51とに対して△31玉はやはり▲41銀と食いつかれ、攻め合った変化1図(上右図)は先手の▲52と引が詰めろで、1手勝ちコースです。

よって▲51とには△同玉とし、直線的に5図まで進みます。

5図からの手順

△53角打▲54金△57角成▲37玉△71角▲65飛△56馬▲63飛成△42玉▲72竜△62銀▲63歩△57銀不成▲62歩成まで先手良し(結果4図)

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5図からもあまり有力な変化はなく、一本道に近いと思います。

△71角にぼろっと銀を取らせる▲65飛が面白い手で、角を取りに行きます。

▲72竜に△33玉として▲71竜△57銀不成(詰めろ!)は覚えておくべき変化かもしれませんが、これも▲55角としっかり打っておけば問題ありません。

結果図はお互い攻め合えば先手一手勝ちの局面なので、△46成銀~△36成銀~△35銀~△26金~△45馬として54の金を外して粘りに行きますが、その展開は変化2図(上右図)のようになり、駒得の先手が体力勝ちできそうです。

以上、ここまで3図から△42銀の展開を深く調べていきました。長くなったので後手が銀を自陣に投入する手は次回また見ていこうと思います。