将棋研究 2六歩の足跡

△54銀型雁木を潰す!左美濃急戦 part2

 引き続き前回の1図から捻った後手の変化を潰していきたいと思います。1図を再掲します。

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 1図からの手順③

△42金右▲15歩△同歩▲24歩△同歩▲15香△19角(3図)

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△42金右がひねったようで実は一番手強い対応です。この手は直接ソフトが示しているわけではないのですが、進めていくと簡単に先手が良くはなりません。狙いとしては直接には一歩持たれてからの▲44歩の緩和ですが、真の狙いは▲21飛成が響かないようにすることです。例えば3図から▲27飛△15香▲24飛△37角成のように進むと飛車が成れても後手にとって条件が良いので後手も十分です。具体的には▲21飛成の瞬間に△31金(追記1図)と引いた形が手堅く、龍とと金だけでは簡単には破れないので後手よしです。(ちなみに△19角を打たずに▲24歩△同歩▲同飛△15香は後手にとって条件が悪いので流石に先手良しになります。)

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この変化は結構重要で、今までの1図から△44角の変化ではこのような変化は触れていませんでしたが、これは飛車を成り込めば先手がはっきり良かったためです。例えば同じように桂香を渡してでも飛車を成り込んだときに、▲23角の筋があるため後手は△31金と当てて受けることが出来ません。そして先手からは▲23歩(追記2図)と垂らすのが速い攻めで非常に厳しいです(+1500点前後)。追記1図と追記2図を比べれば先手の攻めの厳しさの差が一目瞭然かと思います。

このような細かい陣形の違いが形勢に差をもたらすので、この場合は△32金△42金型では▲21飛成は甘くて桂香の方が価値が高く、△32金△52金型では▲21飛成が非常に厳しいということを覚えておきましょう。

3図からの手順

▲24飛△23歩▲29飛△37角成▲11香成△44桂▲24歩△38馬▲19飛△17歩(4図)

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先手は▲27飛ではダメなので強気に進めます。手順中△37角成で△15香はじっと▲48金として▲24歩を楽しみに先手良しの展開です。よって本譜の進行が後手にとっては最善です。△44桂は▲44歩を消しつつ急所を狙う味の良い一着ですが先手も2筋から3筋を絡めれば手になります。

4図からの手順

▲35歩△24歩▲34歩△28馬▲49飛△56桂▲33歩成△同金▲56歩まで先手ペース(結果3図)

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4図から自然に進めた結果3図は先手そこまで差がないものの、(+200~300)後手も馬の動きが難しく(例えば△38馬なら▲39香)、駒の豊富な先手ペースの展開だと思われます。

以上で1図からの変化は一通り網羅できたのではないかと思います。どの順も先手が満足できるため基本1図では既に作戦勝ちと言えるでしょう。次回以降の雁木記事は基本図を変えて、その形における仕掛けの成否について調べていこうと思います。

 

18/9/19 追記

実戦でも頻出の触れておくべき重要な変化を追記しました。また、誤字、構成等を修正しました。